絶望の夜、決意の夜。
2005年4月12日 恋愛昨晩、本を読みつつ早めに床についたら、恋人から電話がきた。
さっきは「明日は休みだよ」とメールが来ていた。返していない。
つかれはてた私は、電話に出ることができずに、ずっと着信音を聴いていた。ビートルズの「In My life」。いい曲だなぁなんて思いながら。
それが愚かなその場しのぎの逃げでしかないと頭ではわかっていたけど、どうしても手を伸ばすことができなかった。涙がでた。
そのあとにまた電話が鳴り、3回目の恋人からの着信音が鳴り終わったあと、意を決してベッドから出た。話そう、と思った。
恋人は「ごめん、寝てた?」といつもと同じ声で言った。胸が苦しくなった。
はじめは恋人の仕事の話を聞いていた。いつもどおり私は憮然とした態度でしか聞いてあげられなかった。恋人は「眠いの?」と案じてくれる。そうじゃない。
「今はさーくんのこと考えても楽しい気持ちになれない。悲しいとかさみしいとか、そういうことしか浮かんでこない。もう疲れた。もう無理です」
私が一気にまくしたてたら、恋人は無言になった。沈黙を怖いとは思わなかった。私が酷いことを言っているってわかっていたから。
恋人は、「無理だって思ったら全部無理になっちゃうんだよ?」と諭した。
「これから俺たちにはいろんなことが待ってる。俺が学生のときみたいにはできないけど、そのぶん会えたら喜びも幸せも大きいはずだよ。この現状はどうしたって変えられないんだから、そこでどう過ごすかを考えようよ」と。
最もだ。まっとうで、正論だ。
でも私は今さみしい。今会えないのが悲しい。先のことなんてわからないけど、今この瞬間に辛い思いをするのは、もう疲れたのだ。泣きながらさーくんに電話したりするのももう嫌だ。
恋人は半ば呆れたようすで「じゃあどうしたらいいんだよ?」と訊ねた。私はなにも言えなかった。
とりあえず今日は寝る、と電話を切った。
そのあと、声を出して、ふとんを引っ掴んで、身をよじらせて、泣いた。あんなに激しく泣いたのは久し振りだった。
暗闇の中で泣いて泣いて泣いて、どんどん涙を流したら、なんだか笑えてきた。アタマがおかしくなったのかと自分でも思ったけど、なんだかよくわからないが笑ってた。頬にはまだ涙のあとがあった。
翌朝目覚めたらまた雨で、それでも日々はしっかりと回っていて、動かなきゃいけなかった。アタマは妙に冷静で、腫れた目だけが昨晩を思い出させた。
いつものように仕事をして、ひとりでお昼を食べているときに、恋人に「顔を見て話したいから、今日会えませんか」と電話をした。恋人は狼狽していた。
仕事が終わって、恋人の家の駅まで駆けつけた。
私は自分の気持ちを伝えたらすぐに帰るつもりだったんだけど、ごはんを食べようという恋人に引きずられてファミレスに行った。
そこでもやっぱり恋人は仕事の話ばかりで、ほんとに仕事のことしか考えられないんだなぁと思った。
私は唐突に「もうダメなんじゃないかって思ったの」と言った。恋人は固まっていた。
私も頑張らなきゃって思ってても、さみしくて辛くて、それが限界まできていた。でも考えたら私は「彼氏に会えないからさみしい」んじゃなくて、「さーくんに会えないからさみしい」んだって気付いた。かわりのひとなんかいない。それを確認しに来たの。それでやっぱりさーくんじゃなきゃいやだって、今日思った。
そう伝えると、恋人はうん、と頷いた。
私は、恋人の顔を見て自分の気持ちをちゃんと伝えられたことで、やっと、心から笑えた。
ファミレスを出て、手をつないだ。駅までの道はほんのすこしだったけど、ぎゅうぎゅうと手を握りあった。改札のところで一瞬のチューをした。ほんとに、ふれあうだけの。でも感触はたしかにそこにあった。
またね、と言って手を振った。
雨の上がった帰り道、もううじうじしねーぞ、と決意を固めながら、大股でガンガン歩いた。身体はつかれていたけど、妙に気持ちよかった。
さっきは「明日は休みだよ」とメールが来ていた。返していない。
つかれはてた私は、電話に出ることができずに、ずっと着信音を聴いていた。ビートルズの「In My life」。いい曲だなぁなんて思いながら。
それが愚かなその場しのぎの逃げでしかないと頭ではわかっていたけど、どうしても手を伸ばすことができなかった。涙がでた。
そのあとにまた電話が鳴り、3回目の恋人からの着信音が鳴り終わったあと、意を決してベッドから出た。話そう、と思った。
恋人は「ごめん、寝てた?」といつもと同じ声で言った。胸が苦しくなった。
はじめは恋人の仕事の話を聞いていた。いつもどおり私は憮然とした態度でしか聞いてあげられなかった。恋人は「眠いの?」と案じてくれる。そうじゃない。
「今はさーくんのこと考えても楽しい気持ちになれない。悲しいとかさみしいとか、そういうことしか浮かんでこない。もう疲れた。もう無理です」
私が一気にまくしたてたら、恋人は無言になった。沈黙を怖いとは思わなかった。私が酷いことを言っているってわかっていたから。
恋人は、「無理だって思ったら全部無理になっちゃうんだよ?」と諭した。
「これから俺たちにはいろんなことが待ってる。俺が学生のときみたいにはできないけど、そのぶん会えたら喜びも幸せも大きいはずだよ。この現状はどうしたって変えられないんだから、そこでどう過ごすかを考えようよ」と。
最もだ。まっとうで、正論だ。
でも私は今さみしい。今会えないのが悲しい。先のことなんてわからないけど、今この瞬間に辛い思いをするのは、もう疲れたのだ。泣きながらさーくんに電話したりするのももう嫌だ。
恋人は半ば呆れたようすで「じゃあどうしたらいいんだよ?」と訊ねた。私はなにも言えなかった。
とりあえず今日は寝る、と電話を切った。
そのあと、声を出して、ふとんを引っ掴んで、身をよじらせて、泣いた。あんなに激しく泣いたのは久し振りだった。
暗闇の中で泣いて泣いて泣いて、どんどん涙を流したら、なんだか笑えてきた。アタマがおかしくなったのかと自分でも思ったけど、なんだかよくわからないが笑ってた。頬にはまだ涙のあとがあった。
翌朝目覚めたらまた雨で、それでも日々はしっかりと回っていて、動かなきゃいけなかった。アタマは妙に冷静で、腫れた目だけが昨晩を思い出させた。
いつものように仕事をして、ひとりでお昼を食べているときに、恋人に「顔を見て話したいから、今日会えませんか」と電話をした。恋人は狼狽していた。
仕事が終わって、恋人の家の駅まで駆けつけた。
私は自分の気持ちを伝えたらすぐに帰るつもりだったんだけど、ごはんを食べようという恋人に引きずられてファミレスに行った。
そこでもやっぱり恋人は仕事の話ばかりで、ほんとに仕事のことしか考えられないんだなぁと思った。
私は唐突に「もうダメなんじゃないかって思ったの」と言った。恋人は固まっていた。
私も頑張らなきゃって思ってても、さみしくて辛くて、それが限界まできていた。でも考えたら私は「彼氏に会えないからさみしい」んじゃなくて、「さーくんに会えないからさみしい」んだって気付いた。かわりのひとなんかいない。それを確認しに来たの。それでやっぱりさーくんじゃなきゃいやだって、今日思った。
そう伝えると、恋人はうん、と頷いた。
私は、恋人の顔を見て自分の気持ちをちゃんと伝えられたことで、やっと、心から笑えた。
ファミレスを出て、手をつないだ。駅までの道はほんのすこしだったけど、ぎゅうぎゅうと手を握りあった。改札のところで一瞬のチューをした。ほんとに、ふれあうだけの。でも感触はたしかにそこにあった。
またね、と言って手を振った。
雨の上がった帰り道、もううじうじしねーぞ、と決意を固めながら、大股でガンガン歩いた。身体はつかれていたけど、妙に気持ちよかった。
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